2日目
昨日の夜、花火を見てお兄さん達はバイバイと帰ってしまった
昨日の賑やかで楽しいのから一転
伴奏者の前に1人
今日は静かだ
早朝7時前に登りだした
昨日 カンテのところが何回やっても滑って止まらなかったから、早朝やって見るというのだ
夏は日中湿度が高いし、温度も高いからね
いつも学校は起こさないと起きられない人が珍しく自分から起きて支度している
朝はチャンスらしい
でも中々簡単にはとまらない
あっ、止まる!!と思ってもそれは一瞬で、すぐ手が滑って落ちてくる
スタートだってマット1枚でやりたいと言ってヒーヒー言いながらやっている
その姿に、別にそんなの拘らなくていいのにな、やっぱりそんな性格やなぁ と内心私は思ってしまう
足が浮いた瞬間、たまっこが一応念の為マットを急いで岩にくっつけるようにズラす そしてダッシュでマットから離れてみしかを見る
午前中ずーっとひたすら2人してこの繰り返し
何やってんだかね
やっぱりさ、夏は種蒔きくらいでいいんちゃうの?
堪らず話しかけた私を、さも聞こえかったかのようにみしかは何事もなく
落ちた所を悩ましげにジッと見つめ、岩の粒を1つ1つ確認しつつ、足を横に乗せるからと横向きに沿ってそっとブラシをかける
そしてまた登りはじめる
右手の指は切れた所がとうとう裂けてしまったのに
指の感覚が変わると流石にこれは厳しいからテーピングも絆創膏も貼らない
血が岩につかないように気をつけて登らないといけないけどねと話してくれた
きっといつも岩に一緒に行ってくれる 強い兄さんがみしかにちゃんと教えてくれたんだろう
当たり前の事かもしれんけど感心してしまった
こうやって先輩クライマーから受け継がれたものをちゃんと大事にしてくれるといいな
先輩には感謝ですね
午後になって雨が降り出してきた
降り出したらあっという間にザーッとくる
空を恨めしそうに見るみしか
少しずつ岩も濡れてきた
でも相変わらずトライするのをやめない
私もマットの出し入れにいい加減疲れてるし腰も痛い
もうこの先土砂降りが来そうやから、やめようと告げたけど
あと一回だけいい??
みしかにおねがいされる
またこれか‥ すでにわかってたけど
ふと、先程までの雨も少し弱くなったきがする
今がチャンスだ
真剣な顔で上部をしげしげ見つめ 深く深呼吸をするとマットを軽く蹴る
奇跡が起きたと思った
ずっと止められなかった一手が止まる
雨なのになんで止まったかなんてわからん
私は慌ててマットに走り寄る
心臓がバクバクして声かけようにも声がうまく出ない
そこから時間が止まったように思えた
足を確認しつつ少しずつゆっくり身体を上げていく
よしカンテを掴んだ!!
もう大丈夫や!!
と思ったのも束の間
足が滑り落ちた
みしか落ちる〜 苦しそうな声
落ちそうになる身体を上げるために、無理やり左足でヒールをかける
ヒールかけて上体を上げようとすると滑ってヒールがズルズルと滑り落ちる
私はみしかが危ないというのに
いつのまにかバクバクいってた心臓も手にかいてたベッタリ汗もスッと引いてて
そしてスポットする訳でもなく、その姿をただ黙って立ってじっと眺めてた
必死でしがみついているみしかはとてもダサかったけど一生懸命で、登る事を身体全体で感じていて
これがみしかが岩好きな理由なのかと私は痛烈に感じて感心してた
そして不謹慎ながら ニヤけてしまう
そんな事を知らないみしかは、なんとかマントル返してスラブ面を慎重に登り、岩の上に力強く立ち上がる
そして開口一番
楽しかった!!!!大声で叫んで降りて来た
登れたら‥やつれんのソフトクリーム食べる約束やったから急いで向かったけど、たまっこの超方向音痴が発令して、結局迷子になり辿り着けず
帰り道、助手席でみしかは半べそやったいいのが無かったから3年前の写真